朝日杯将棋オープン準決勝・決勝

こんにちは、シーマンです。

昨日第11回朝日杯将棋オープンの準決勝・決勝が行われ、藤井聡太五段が勝ち、史上最年少での棋戦優勝を果たすと共に、規定により六段昇段を決めました。

 

まず羽生竜王との準決勝。戦型は先手藤井五段は角換わり志向、対する羽生竜王は角道を止めて新型雁木を選びます。角交換後、お互いに端攻めを絡めつつ飛車先の歩を切ったところで、藤井五段が4三歩の王手。これに対する応手が悩ましいところしたが、羽生竜王は同金左と竜を作らせる驚きの順を選択(どう応じても味が悪かったようです)。飛車を成られた後手は攻め合いを選択しますが、藤井五段の見切りが正確でなかなか先手玉に迫れません。

圧巻は最終盤の角切りからの2二歩成。大駒を渡して急いで攻めたくなる場面ですが、じっと歩を成る手が、自玉の安全度の見極めの正確さを感じさせる一着で、藤井先生の非凡さを感じました。

また直後に放った7四歩も、6三への退路を封鎖する直接手(7四銀、7二銀など)が目につくところ、6三の地点を直接押さえる手ではなく、かつ安い駒で迫るあたり、彼の終盤力の高さに唸らされました。

最後は羽生玉を見事に即詰みに討ち取り、決勝進出を決めました。

 

続く決勝の相手は、準決勝で久保王将を撃破した広瀬章人八段。戦型は角換わりからの相腰掛銀となりました。39手目、先手藤井五段の4五歩の仕掛けに対し、後手広瀬八段の右玉を匂わせる5二玉が用意の一着。なかなか良い手に見えましたが、その後51手目の6七角が解説陣をも唸らせる絶品の一手。良い受けがない後手の広瀬八段は王将を受けに使い、全力で受け切りを目指すことを選択します。その後58手目7四金の合い駒に対し、何と藤井五段は同角と驚きの角切り。角と金桂の二枚換えとは言え、2九の飛車がまったく攻めに使えておらず、素人目には先手の攻めが続かないように見えましたが、藤井五段はそこから巧みに手を作っていきます。

一方の広瀬八段も必死の受けで応戦し、解説曰く「先手が攻めを繋げられるか、後手が受け切るかの勝負」となりました。

86手目に広瀬八段の放った攻防手3七角、打った瞬間は後手が受け切ったように見えましたが、直後に藤井五段が凄まじい一手を見せます。7三の地点で攻め駒を清算し、攻めの拠点が無くなったように見えたところで、4四桂のタダ捨て(取ると4五歩で飛車角両取り)。ほぼ裸玉の後手は大駒を渡せないため、この桂馬を取ることができません。泣く泣く2六角成としますが、3二桂成で金を丸得することに成功します。

そこからは藤井五段が金銀のスクラムでじわじわと寄せて行きます。広瀬八段も8五桂、7六歩などなんとか先手玉に嫌味を付けて迫りますが、116手目の3六馬に対し、3七金のタダ捨てがこれまたアクロバティックな一着。取ると4九の飛車で角を取ることができ、△同飛には6三銀成から詰みがあるというという仕組み。この手を見て広瀬八段が投了し、藤井五段が15歳6ヶ月での全棋士参加棋戦優勝という偉業を成し遂げました。もちろん最年少記録です。(これまでの最年少記録は羽生先生の17歳2ヶ月)

 

2局を見ての感想ですが、師匠の杉本七段も仰っていましたが、藤井先生は角・桂の使い方が巧みだという印象を受けました。角・桂は頭が弱く、ひとつ使い方を間違えると安い駒で取られるリスクがある一方で、トリッキーな動きをしますので、相手の読みを上回る好手を指すチャンスもあります。藤井先生は私の目から見ても角・桂の使い方が絶品で、特に中盤で打つ自陣角は職人技の域ではないでしょうか。

 

これでC級1組昇級、棋戦優勝と短期間に素晴らしい結果を残しましたが、ことタイトル戦となると、他の棋士も目の色を変えて挑んでくるでしょう。すぐには周りが期待するほどの結果を残せないかもしれませんが、非凡な才能は誰もが認めるところですし、今後も着実に成長してくれればと思います。

それではまた。